こんにちは。編集長のタカシJJです。
2017年5月に玉造の商店街にオープンしたフォカッチャ専門店「パンヤ」。
オープンして以来、雑誌にTV、WEBメディアなどに取り上げられることも多くInstagramのフォロワー数も1.2万越えしてる超人気店です。
決して恵まれてるとは言えない立地条件のなか連日沢山のお客さんが列をつくり、完売する。一体なぜ?こんなにパンヤが支持され続けるのか?そんな問いを店主の中津さんにぶつけてきました。
比べられるものが多かったらあかん。
-実際に来てみたら古民家に少し手を加えたシンプルなお店で、雰囲気やトータル的なデザイン、それにフォカッチャの味、量、価格などあらゆる部分に違和感がない、全てがぴったりハマってると感じたんですが、どういうことなんでしょうか?
中津さん:まあ結局そこというか、難しい話なんですけど、要は「中華そば」みたいになればいい。
-中華そば!?どういう意味ですか?
中津さん:パンっていう国民食があるじゃないですか。認知度的な話でいうとやっぱり国民食であるべきやと思うんです。
例えばめちゃくちゃこだわって、やりすぎるとその値段じゃ提供できなくなる。やっぱり僕が好きなパン屋は駅前の古~いパン屋さんとかなんですよ。だから中華そば食べに行くみたいな感覚ですよね。
パンって本当に子供からじいちゃん、ばあちゃんまで食べるものなので高すぎてもオシャレすぎても地域には根付かない。かといって普通のパン過ぎてもどこにでもあるし比べられるものが多かったらあかんなぁと思ってるんです。
だから自分が焼けるパンだけに絞った専門店にしたんですよ。フォカッチャていってもみんな曖昧でしょ?
-わかる人にはわかる、、、?イタリアの?パンの一種?ぐらいな感じですかね(笑)
中津さん:みんなわかってないですよ。何?フォカッチャってみたいな(笑)
-専門性を出すためにフォカッチャにしたんですか?
中津さん:僕が焼けるパンとしてはそれしかなかったんですよ。メロンパンはよう焼かんし。比べられるもんが少ないですよね。例えばスーパーでフォカッチャって言っても「まぁこんなもんか」みたいな感じやけど、ちょっと外食する人やったら「どこどこのイタリアンで食べた」とかっていう経験もあると思うんです。
それがフランスパン専門店やったらめちゃくちゃこだわらなあかんし、比べられるものも多い。食パン専門店やと、それこそなんぼでもありますしね。それで選んだんがそこやったんですよね。
-つまり比べられるものが少ない土俵であり、かつ自分がつくれるものという2つから導き出されたものが「フォカッチャ」だったんですね。やっぱり狙って選んでたんですね!!
中津さん:ある程度はね。蓋開けてみないとわからないことも多いですよ。だから「なんやねんそれ」みたいな反対も一杯あったし(笑)やっぱり誰もがやってないところですよね。
フォカッチャ専門店といっても本格的などうやこうやって言えない。僕がイタリア行ったわけでもないし、そんな偉そうなこと言えでる立場でもない。だからそこは逆にこだわらないんです。
小豆バターとか僕が好きやからやってるからね。イタリアのフォカッチャにはないですよね。だから違和感ないっていうのはそこやと思いますよ。
けどこの地域性を考えたらそういうメニューも必要やと思うんです。あとはお店の敷居は低くしつつプロが考えて作ったもんやっていうのも見せないといけないですよね。
-こだわるポイントと地域性って大事!絶対相性ってあると思いますもん。
中津さん:でもこんなブームって、言うても一時の事なんで。前の店も11年やってて、それこそそういうのも見てきてるし今後続くためにのペース配分とまた今後も考えていかないと。近所のおばちゃんにも「いつ来てもないやん、閉まってるやん」って文句言われてますしね(笑)
一周まわって原点に返ったソフトクリーム
-いつお店をオープンしたんですか?
中津さん:去年の5月です。
-え~!?まだ1年ちょっとですね。
中津さん:今は、ホンマに情報が早いから商売のペースも早いんやと思います。バカンス食堂※1をやってる時はそんな風に感じたことがなかったから。商売の感じも違ってきてるなと。
※1
中津さんが28歳の時に出店したピザ屋さん。東小橋にあったお店で個性的なお店づくりとリーズナブルで美味しいピザやDELIなどが人気だったとか。
ある程度、流行というものを感じとかなあかんし、でもあんまりそっちに走りすぎてもあかんし、けど走っとかなあかんていう要素もあるし、、、それがウチで言うと「ソフトクリーム」なんです。
-あの!?ソフトクリーム!?
中津さん:これは見事に当ててますからね。今となってはこのフォルムって普通になってきたんですけど1年前は全然少なかったんですよ
人気商品のソフトクリーム
-確かに!僕、最初にパンヤで見て、他の店で同じようなソフトクリーム見た時に「パンヤと一緒や」っていう風に思いましたもん。
中津さん:これはやっぱり情報のキャッチが早くなってますよね。逆に言うたらこだわり何もないんですよ。
パンってある程度自分が作るもんなんで、やっぱりプライドもあるし何とか良いものにしようとしますやん。そのへんは全く何も意識しないですからね。もうソフトクリームの液入れて、あとは機械やってくれるだけですから(笑)
-そうなんですか!?見た目も違うし何かこだわってるのかな?って思っていました。このフォルムって機械が作り出してるんですか?
中津さん:ソフトクリームの出てくる機械の口をカスタムしてるんですよ。
ソフトクリームって今、全部カタチが星型でしょ?けど日本に入ってきた時って実は丸型なんです。おぼろげながら昔の百貨店の大食堂で食べたソフトクリームのイメージはこっちなんですけど、いつのまにか星型になってたんですよね
-1周まわって元に戻ったっていう感じなんですね。
中津さん:そうですね。まあでも隣のレトロな交番の雰囲気とかともハマったんと思いますよ、なんとなく全体的にレトロな感じが。
-確かに!お店の随所にキラリと光るアイテムが並んでる気がしますが、お店自体はそんなに作り込んだって感じでもないですもんね。
中津さん:そうですね。でも実は機材回りは一応設計士の人が作ってくれていて既製品じゃあないんですよコレ。あとはコンクリートはって、看板屋さんに頼んで。フォカッチャ専門店「なんちゃらなんちゃら」やと伝わらへんから「パンヤ」っていう名前にしたんです。
-そのセンス!!(笑)
中津さん:おばちゃんらが見ても分かるし、入ってきてくれますから。「食パンは?」とか言って(笑)
変な細かいこだわりを点で置く
-初めて来た時に3つぐらいフォカッチャを買ったんですけど、蓋を抑える輪ゴムが全部色違いやったんですよ。「オペレーション的になのか?」、「遊び心でやってるのか?」どっちなんだろうって?
中津さん:たまたま、たまたま、そんなとこまでしてませんよ
-こだわりが凄いって勝手に思ってました(笑)。
中津さん:多分でもこれが普通の輪ゴムやったら可愛くないんでしょうね、100均でわざわざ買ってきてますよ。まあでもわざわざですよ。そのちょっとしたことですよね。輪ゴムまで可愛いってインスタあげる人いるんですよ。
そういうとこちゃいます?こんなの気にならない人は全く気にならへんし、いらん人はただの輪ゴムでいい。見る人は見てるだけであって、だからそこをやるかやらんかだけなんだと思います。
これもパイナップルなんですけど、気になる人は「パイナップルすげー」ってなるんですよ。なんかそういう要素を点で置いてるんですよね。自分が好きなことなんですけど、見る人からしたら「これすげーなみたい」な。細かい変なこだわりみたいなものをちりばめてますね。
あとはわかりやすいメニューにしたり、それをいちいち作ってるって言う価値観。「あずき炊いてます」って書くだけで全然違う。
-完成品が並んでいる商品と、注文後に具材を詰めてくれる商品があるじゃないですか?あれもすごいなと思ったんです。
中津さん:あれも追っつかんからアレになったんですよ (笑)
-わざわざやってくれてる感が凄いあるな~って思ってたんですけど、違ったんですか?(笑)
中津さん:結局行列が長くなりすぎてダメになって、今はもう詰めておいてパッパッ渡せるようにしてるんです。何がどうどれが正解なのかですよね。それを好きな人は今けえへんし、今並ばなくてすぐ買えるからっていうてガンガン回ってるんです。例えばそれがこだわりやったとしたら貫かなあかんし、別にウチはそこにそんなこだわってないから(笑)。
けどそのこだわり守って人持たせて嫌な思いさせるか、「並んでるけどスッと買えるわ、また買えたラッキー!」と思ってもらうかで全然違うし、こっちとしては100円に200円のもん売ってるんで数売らなあかんのですよ。500円、600円のサンドイッチやったらね、僕ももっとこ綺麗にしてお店に立つんですけど(笑)そこら辺をしてるだけですわ。
ギリギリな街、玉造。
-ここまで流行るお店ができると思っていましたか?
中津さん:ここまでは思ってなかったですね。こんな場所ですからね、ミナミで尖ったことやってるわけでもないし。だけど玉造っていう街がギリギリなような気がするんです、尖ったギリギリな街というか。
これ以上ってほんまに「他所でやりや」ってなるやろし。置いてる商品もギリギリのところ。あんまりコーヒースタンドのようになりすぎてもあかんけど、その辺の需要も絶対あるんで 。
-うわ~なんかその感覚分かる気がする、、街の個性って絶対ありますよね!そういう事を感じる臭覚って経験がものを言いそうな気がするんですけど。
中津さん:ある意味商売センスなんとちゃいます?けど僕は経営者向きではないんです。
-どちらかといえば職人肌って感じなんですか?
中津さん:作り手ですね。
-作り手であって、経営者向きじゃない?
中津さん:よう下を育てんとか。商売人ってこっからじゃないですか?次の店舗をどうやとか。やりたいことはあっても変に拡大路線にあんまりならないんですよ。
-店舗展開を視野に入れてない?
中津さん:こんなことやりたいなーとかっていう気持ちはありますけど、商売、お金儲けに直結していかない。そこらへんなんですよ。
例えば価格設定1つにしても安すぎるとかっていうのはお客さんが判断することやし、自分やったらこの小さいパンに300円とか400円かやっぱり疑問が残るんですよね。。。う~んってしなってしまう。
けどそこらへんと比べてしまうとスーパーになってしまうし。その辺の差別化っていうのも考えないといけない。
-なんだか針の穴に糸を通すような地道な作業というか、、正解を導き出す確率が高い、いわば打率の高いバッターみたいですね中津さん。
中津さん:だと思います(笑)
一番痺れたパン「塩パン」
中津さん:フォカッチャ屋って大阪にもあるんですけど、やっぱり場所もいいし、単価も高いし、オシャレなんですよ。けどそれって、、、普通なんですよ。
それで1,000円は痺れない。
僕が一番痺れたパンって塩パンですよ。塩パンってすげーなって(笑)
-確かに塩パンってめっちゃ安いし美味しいですもんね。
中津さん:100円内であんなパンが。だからそういうパンにはならなアカンなあとは思うし。けど話題性は作っとかなあかんしって。それを踏まえて街の生態系をどれだけくずせるようなお店にできるかってことですよね。
-「まちの生態系を崩す!?」でた名言!!(笑)
中津さん:ここにお店ができるまで、こんな行列なんてなかったし、道を知らん人の方が多かった。それが「行列が出来てる」、「何でこんなところに?」、、それって生態系をちょっと崩してると思うんですよ。
ーなるほど。確かにそうですね。
中津さん:そうやって行く中で、大阪中の人がパンヤを知れば、多分この先少しは楽することもできるんじゃないかなあ~(笑)。そんな感じで、時よりやりたいことやりながら今後もやっていけたらええかなあって思ってます。
取材を終えて
メディアにも取り上げられることが多く連日売り切れ必死の人気店。イケイケなお店を取り巻く環境とは別に当の本人である中津さんは至って冷静でした。時代・地域性・トレンドを読み、そこに自分の生み出す商品を落とし込む。今までの経験を活かし針の穴に糸を通すようなピタッとハマる経営哲学と地道な作業が人気店を支えているのかもしれません。
日々進化する「パンヤ」と中津さん。気になる方はぜひ玉造のお店へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
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