【人間区宝さんVol.22】「ステュディオスターシップ」代表 小嶺豊三郎さん




 

とある街角よりこんにちは!編集長のタカシJJです。

いきなりですが皆さん「穴かがり」ってご存知ですか?

ちなみに僕は全くわかりませんでした(笑)

 

「穴かがり」のヒントは…..もっと寄ってください!

 

もっと寄って!!

 

スルドイそこのあなた!!もうわかったんじゃないでしょうか?

 

そうなんです!

赤丸で囲った部分!ボタンの穴の周りに関する仕事のことなんですが、詳しくはコチラ↓

あな‐かがり【穴×縢り】の意味

ボタン穴やひもを通す穴のへりを糸でかがること。

出典元:goo辞書

とのこと。

世の中にはいろんな仕事が存在してるとは思いますが「穴かがり」という言葉を聞いたのすら初めて。

恐らく取材をさせてもらう事がなかったら一生知らないままでいたに違いない「穴かがり」という世界について、業界内で若く凄腕の職人さんがいらっしゃると聞き、話を伺ってきました。

というわけで早速インタビューをご紹介したいと思います。

小峰さん(ステュディオスターシップ 小嶺商店店主 穴かがり職人)

家業が縫製工場を営んでいたことから幼少期よりミシンなどに精通。就職の為に一度業界から離れるも10年後、体調を崩しリハビリにとミシンを触りだしたの機に業界にカムバック。7年後、たまたま安く譲ってもらった穴かがり用ミシンをキッカケに穴かがり職人へと方向転換。その高い技術力と抜群のコミュニケーション力が噂を呼び、若手職人として現在は活躍中。声がヒロT氏に似てる(タカシJJ調べ)

ところで「穴かがり」って何ですか?

 

ーいきなりなんですが、ズバリ穴かがり屋さんというのは具体的にどんな仕事をされてるんですか?

小嶺さん:服をつくる上で、ほぼ最終工程、もしくは最終から2番目の工程で行われる作業で、ボタン穴やひもを通す穴のへりを糸でかがる作業のことですね。

 


ー穴?穴って。。。こういうことですか?これをやる?(自分のシャツのボタン穴を見せながら)

小嶺さん:そうですね、この工程の作業をしています。

 

ーこれは服づくりの最終工程にするものなんですか?

小峰さん:ものによっても微妙に違うんですが、全部仕上がってきた時にはボタン穴はないんです。印があるので、そこに注文通りに穴かがりを施すんですよ。依頼があればボタンをつけることもありますし、頼まれてなかったら他の方がボタンをつけます。

 

小嶺商店が入るビル。森之宮のスギ薬局の裏に建つ大阪スポンジャービル(大阪谷町既製服【協】)

ー聞いていて思ったんですど、服ってボタン1つでハイ!出来上がり〜♪的な全自動な世界ではないんですね。

小嶺さん:まだまだ全自動ではないですね。それが例えばYシャツを縫い上げる場合、僕らから見てても9割ぐらいアナログな作業じゃないかな?下手したら99%をアナログでつくってるメーカーさん、工場さんもいてると思いますよ。

 

ーええー!?全自動で服が出来上がるぐらいに簡単に想像していました。そんなにアナログな世界だったなんて、、、。世の中に溢れるほど服って流通してるのに、聞けば聞くほど人の手が必要な工程ばかりでビックリ‼︎

小嶺さん:型紙(パターン)は、ある程度数字を入力して形はできると思うんですけど、結局細かい部分の修正は人の手でしていかないといけない。

 

ーなんで修正が必要なんですか?既製服で大量生産する場合、あるサイズのパターンをつくるなら修正する必要なさそうなのに。

小嶺さん:それがあるんですよ~。例えば薄い生地で服をつくるとしても場所によっては伸びる生地と伸びない生地を使うことがあるので、縫い上げた時に必ず微妙なサイズ感のズレがでるんです。つまり遊びが多いんで型紙を裁断するときに調整したり、縫っていく最中に調整したりするんです。

なので全く伸び縮みしない生地でMサイズ(100/100/100)をつくるのは割と簡単で、これがTシャツに使われているようなストレッチ性のある薄い生地でつくろうと思ったら(100/100/100)というサイズ感をつくるのは割と面倒くさかったりするんですよね。

違うメーカー、違う工場で、Mサイズ(100/100/100)で作ってもらったとして「仕上げてるつもりですねん」って言われても、実際には103cmで仕上がってたり、ウエストだけ105cmだったり。極端な話、台形やX形で仕上がってる場合もあるんです。これが裁断の技術や縫製の技術やったりするんですね。


ーそれって担当した工場や部署…いや、もっと言えばその人の腕によって仕上がりが違うってこと?

小嶺さん:違います。全然違います。だから我々もここの工場は腕良いなぁとか、ここはちょっとなぁ~っていうのが一度依頼すると大体わかるんですよ。

 

なんで穴かがり屋さんに?

 

ー今現在、穴かがり屋さんってどのぐらいあるんですか?

小嶺さん:僕が小さい頃は緑橋界隈だけで6~8軒ぐらいあったと思います。今はうちを合わせて3軒ぐらいでしょうか。

 

ー全国的にみたらやっぱりまだまだ、、

小嶺さん:めちゃめちゃ少なくなってますね。AIがどうのこうのっていうような話もあるし、将来的には恐らく穴かがりの仕事も無くなっていくんじゃないかなぁと思ってます。

 

ーマジっすか!?その業界の人から「将来的になくなる職種って」聞くのは複雑な気分です汗。服に対して穴かがりをする職人さんの数が足りない?

小嶺さん:少ないですね。話せば長くなるんですが、これが何で減ってるかというところから説明するとバブルの頃に一気に日本でつくることをやめて海外生産に変えていったからなんです。その時に一気に穴かがりとしての仕事が日本から無くなりました。

 

ーでも現在でも日本に穴かがり屋さんが存在するということは必要なんですよね?

小嶺さん:もちろんそうですね。そして穴かがり屋として今残ってらっしゃる方というのは比較的、腕のいい方が多いんです。東中浜にもめっちゃうまい方がいらっしゃるんですよ。

 

ー上手いの基準が全然わからんーーー(笑)

小嶺さん:仕事を見たら「あの人」ってわかるような上手な方がいらっしゃいます。面識ないんやけど、今は「あの人の仕事とったろう!」っていう気持ちでやってます(笑)

 

ーギラギラしてますね~まさか東中浜にそんな凄い職人さんがいらっしゃるとは!!

小嶺さん:いるんですよ~。

 

ビルの中には様々なアパレル系の会社が入居している

 

ーそもそも小峰さんはなんで穴かがり屋さんをされることに?

小嶺さん:僕の親がYシャツの縫製工場を営んでいて、そこの息子なんです。で、子供の時の遊びがミシンの中に溜まった埃をとること。だって1日作業したらミシンの中が埃まみれだったんですよ。しかもその埃があるとミシンの縫い目が目飛びするんです。

だから掃除するのが大事なんですけど、それが楽しかったんですよね。そのシュールな遊びが幼稚園から小学校低学年頃の自分の遊びだったんです。きもちえぇ~って(笑)

 

シュール!!(笑)

小嶺さん:(笑)その頃から身近に裁縫っていうものがあって、結局この業界から抜けれなかったんですよ。「こんなん絶対飯食べて行かれへん」とか思って嫌いになった時期もあったんですけど、。

 

ーそれがまた何故?

小嶺さん:10年ぐらい全然違う業界で働いていたんですけど、心のどこかで「儲かるんかな~」とか「継がなあかんかなあ~」とか思いながらズルズル過ごしてました。その後体調を崩したのをきっかけに実家に帰省し、リハビリがてらに久々にちょっとミシンやってみようかって、やってみたら縫えちゃった(笑)

 

蛙の子は蛙

 

ーさすがに体は覚えてたんですね。

小嶺さん:10年ぶりにリハビリがてら始めた当初、実は実家の縫製工場はすでに廃業してたんですよ。ただ母親が内職にって昔のミシンともう一台、計2台のミシンを置いたままにしていました。そのミシンで工場さんから時々仕事をもらってて、お直しをやってたんです。

 

ーリハビリからの本業に!?

小嶺さん:ある日、母親が「友達と北海道旅行いってくるわ~」というて旅行に出たんです。もし旅行中に仕事の依頼が入ったら「できるんやったらあんたやっといてええで~」と(笑)。そしたらたまたま依頼が来て 「どうしよう?」ってね(笑)

そしたら夜に母親から電話かかってきて

母「きた?」

小嶺さん「うん、きてんけどどうしたらええ?」

母「あんた多分できるやろ?こうこうこうやっといたら出来るからやっといて~」

小嶺さん「わかったやってみわ~」って(笑)

そしたら次の日の夜にまた電話かかってきて

母「どうやった?できた?やった?」

小嶺さん「やってんけど」

母「あ、ほんならそれで納品しといて~」って(笑)

小嶺さん「え。。。はい(笑)」

 

え~~~~そんな感じですか!?

小嶺さん:そんな感じで(笑)その後、そのまま、ほんとに納品したんですけど、全く問題ない感じで「あ~通ってるぅ~」って思って。じゃあって思ったら今度母親がやってた仕事を全部僕が取ってもうたんですよ(笑)

 

 

ーどんな親子リレー!?(笑)あんたやり~って感じやったんですか?

小嶺さん:あんたやりたいんやったらそっちやったら~?カエルの子はなんとかっていうしってね。

 

ーそれが何歳ぐらいの時やったんですか?

小嶺さん:それが28歳ぐらいの時です。そっからガッツリ縫製で、穴かがり屋になったのがその後7~8年後ぐらいですかね。30代後半にさしかかったぐらいに穴かがり屋さんへ方向転換です。

 

綺麗に仕上げるが大前提。強気の価格設定と決意

 

小嶺さん:なんとか食えてるかな~っていう状態が続いてた時に、たまたま閉鎖するっていう工場さんから穴かがり専用ミシンが10万円ほどで安く手に入ったんです。勉強がてらやってみたいな~っていうて買ってみたのが始まりですね。

 

ーめっちゃラッキー!!

小嶺さん:で、やってみたら結構需要があったんです。「Yシャツの穴かがりできるよ~」っていうたら、「ほな頼むわ。その代わり綺麗にできる?」と。とにかくみんな綺麗に仕上げて。綺麗にできるんやったら回すわが大前提、、

じゃあ~もう綺麗に仕上げるのを条件にうちは金額を提示する、その仕事だけをやる!」って決めたんです。そしたら割と仕事が回ってきて、綺麗にやってくれるらしいで~って話してもらったんで、このまま「これからは穴かがりやで」って勝手に思って。周りをリサーチしてみたらドンドン廃業していってて、これからやと。これはくるぞ!と(笑)

 

 

ー一筋の光が見えた感!!

小嶺さん:そしてちょうど7~8年ぐらい前から、アパレル業界の風向きが変わってきたんです。昔でいうと服を1品番つくるのに200~300枚ってのが当たり前。でも約10年ぐらい前から1品番を10枚とか、っていう風に少しずつしか作らなくなっいてきた。少しづつを沢山つくるっていうメーカーさんが増えてきたんです。

ところが昔の体質な既存の穴かがり屋さんは「無理や。そんな枚数じゃ。できへん。」って仕事を蹴っていってた。「じゃ~それ俺が全部請けるわ~」って手を上げたら小口の人がボンボンもってきてくれるようになって、ましてや皆さん小口やからちょっと高くなっても全然問題ない。

少ない数量やから金額が高いんですよね1枚ずつが。だから穴かがりに対する工賃が多少上がっても、いや全然問題ないですよと。あ~なるほど、売り値が高いものはそれなりに工賃もらえるんやって。そこでやっぱこれやでって(笑)

 

ほぼ独学で身につけた穴かがり技術

 

ところで穴かがりの技術は誰かに習ったんですか?

小嶺さん:誰にも教えてもらってないという。

 

えっ…独学!?

小嶺さん:ほぼ独学です。その当時きてもらってた俗にいう町中にあるミシン屋さんに

小嶺さん「穴かがりややりたいねん、教えてくれ!」

ミシン屋さん「お前やんの?今更?」

小嶺さん「だってないもん」

ミシン屋さん「まあ、そらそうやけどな」

っていう話なって、そのミシン屋さんも昔ミシン屋やりながら穴かがり屋やってたという事がわかり、昔使ってた穴かがりに必要な部品を譲ってくれたんです。そこから自分なりに穴かがりに挑戦しては分からない事があったら、そのミシン屋さんに「ごめん、これどうするん?」って1ヶ月間ぐらいほぼ毎日電話してましたね(笑)

 

はははは。

小嶺さん:お前ええ加減にせえよって(笑)自分で考えてやってみぃ!ってなって色々やってったら結構綺麗にやれるようになって「これでお金とれる」って思うようになったんです。そこから仕事とるようになって、そしたら結構噂をよんでお客さんが来てくれるようになってミシンも新調することになったんですよ。

 

え~凄い。偶然な部分とちゃんとリサーチをした部分がバランス取れてたんですね。

小嶺さん:もうミシンを買い替える時は半年ぐらいリサーチして買いました。悩みましたよ~。結婚して間なしの時やったんで、妻に「絶対、大丈夫やから!穴かがりやで!」って約束して購入しました。

 

割り箸入れor爪楊枝入れ どっちになりたいんや?

 

ー今はお客さんは増えてきてるんですか?

小嶺さん:月によって波がありますが、お客さんの数はちょっとずつ増えてます。ある方に言われたのが定食屋にある割りばしの入れ物になるのか?それとも爪楊枝の入れ物になるのか?どっちになりたいんや?って。

 

ーえっ!?どういうことですか?

小嶺さん:100本入ってる割りばしを10本抜くと割りばし入れがスカスカになってバランスがとりにくくなりますよね。でも爪楊枝だと10本抜いたところで、さほどスカスカにならずバランスを保つことができますよね。

つまり大口の取引先ばかりだと一つ一つの取引自体の割合が大きく依存度が高くなるので、取引がなくなった際に受ける影響が大きい。それに大口はそういうところは数はある分、単価も低くなる傾向が強いんです。

 

 

ー単価の高い小口の取引先を増やすことでリスクを分散できるってことですね!!

小嶺さん:そうです。僕はそれで行こうと。当時、服飾系の専門学校に通う学生さんとかが穴かがりをしてもらおうと思っても、持っていく穴かがり屋さんが町中になかったんですね。数は少ないし、めんどくさいとか、わからんとか、いろいろ理由つけて断るところが多かったんです。どこに持って行くかいうたら百貨店とかにもっていくんですよ。

 

ー百貨店に!?

小嶺さん:百貨店の中にリフォーム屋さんが入ってるんですよね。ただ1つ開けるだけで300円とか400円かかるんですよ。

 

ーぼったくってる!?

小嶺さん:ぼったくってはいないんですけど、その価格が普通になってるんですよ。10個あけたら3000円~5000円するんですよ。それは~!!ましてやお金ない学生さんに穴かがりするだけで3000円~5000円は払ってられへんでってなるんやったら、じゃあ交通費ちょっとかかるけど、うちにおいで~やって。もしくは他の生徒さんや友達と郵送でおくりーやって言うてあげると学生さん喜んでくれるんですよ。そら1着いくつあっても700円とかで穴かがり請けてますからね。

 

ーということは学生さんのお客さんが多いんですか?

小嶺さん:腹立つぐらい多いんですよ(笑)一人一人に宣伝せーよ!っていうてるんです(笑)でもね結局、学生さんらがまた今度就職して現場にいくじゃないですか。就職して、覚えておいてくれたら、それでええんですよ。また仕事頼んでくれるかもしれないし、学生のうちは後輩もいてるし、先生もいてるでしょ。

 

ー未来への投資、種まきですよね。

小嶺さん:おっしゃる通り!!皆さん「学生はわかってないし、教えてあげなあかんし、面倒くさい」っていうんですけど、1回ではわからなくても若いから2回教えたらわかってもらえるんですよ。だから僕は学生さんも含めて個人の人大好き。まぁ大口の仕事が嫌いってわけでもないんですよ笑。ただバランスの問題ですよね。誤解しないように(笑)

 

ーはははは!!今日は忙しい中、いろいろなお話聞かせてくださってありがとうございました!!

小嶺さん:こちらこそありがとうございました!!またいつでも遊びにきてください。

 

取材をおえて

 

話を伺う前までアパレルの世界に対して勝手にオートマチックな世界を想像してただけに、アナログな手作業が多いことにびっくりしました。75歳を越えてからベテランと呼ばれるようになる「穴かがり」という世界において40代の小嶺さんは超若手。これからの時代、小嶺さんのような業界の常識にとらわれることなく柔軟な発想で現状を打開するニュータイプの職人さんが生き残るのかもしれません。

 

◇関連リンク

ステュディオスターシップ